クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


「謝らなきゃって、ずっと思ってた。でも、どんなに『ごめんね』って言っても、こわしてしまったリボンは元にもどらない。そう思ったら、言葉が出なくなっちゃったの……」

先輩の手が、ぎゅっと握りしめられた。

「『新しいのを買ってあげる』って言ったとき、ひなのの顔が悲しそうに曇ったの。それを見てわかった。そういうことじゃないんだって。それからもう、こわくて何も言えなくなって……」

私は、マスクの下でくちびるをかんだ。

先輩の言葉が、胸の奥に響いた。

優衣ちゃんの手紙を捨てた先生の顔が、一瞬だけ頭をよぎる。でも、すぐに消えた。

この人は、あの先生とは違う。

この人になら、本当の私を見せてもいい気がした。理由はわからないけれど、そう思ったんだ。

私はゆっくりと、マスクを外した。

先輩が、息をのむ。

「あなた……もしかして、七瀬さん?」

「はい」

「二年の……図書委員の?」

「そうです」

先輩は、しばらく私を見つめていた。

びっくりした顔、困ったような顔、それから、少しホッとしたような顔。いろんな気持ちが、先輩の顔を通りすぎていった。

「相馬先輩」

私は、裂けてしまったリボンを見つめた。

「これ……私に直させてもらえませんか」

「え……?」