私はとっさにロッカーの陰に、体をすべり込ませた。ひざを折って、できるだけ小さく丸くなる。
パッ。電気がついた。
「……誰か、いるの?」
静かな声が、部室の中に響いた。
足音が近づいてくる。
ロッカーのすき間から、そっとのぞいてみた。
そこには、黒い髪をきっちりお団子にまとめた、きれいな女の子が立っていた。ジャージ姿だけど、背すじがピンと伸びている。
あの人、相馬先輩だ。
覗いた瞬間、こっちを向いた先輩と目が合ってしまった。
心臓がドクン! と大きくはねる。
先輩の視線が、私の手にあるリボンに止まった。
「……泥棒?」
その一言が、胸にぐさりとささった。
違う、そうじゃない──そう言いたいのに、声が出ない。
私はふるふると、首を横にふるのが精一杯だった。
逃げなきゃ──!
窓に向かって走りだそうとした、そのとき。
「待って! 逃げないで!」



