クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


翌朝。登校した私が自分の下駄箱を開けると、一枚のカードがひらりと落ちた。

「……っ!」

見覚えのある『月のマーク』が描かれたカード。

待って……このマーク。これは、私が怪盗ムーンとして使っているカードと──同じだ。一体、どういうこと?

慌てて周囲を見回すけど、誰もこちらを見ていない。いつもの、透明人間の朝だ。

震える指でカードを裏返すと、そこには端正な文字が記されていた。

昨日、図書室の貸し出しカードに書かれていた──あの字だ。

『怪盗ムーン様へ。
あなたの正体、見つけてみせます──日向翼』

息が止まりそうになった。

翼くんは、私を疑っている。足のケガ。指先の傷。そして、体操で鍛えた体。あの人、全部つなげてる。

怖い。でも、やめるわけにはいかない。

カードをカバンの奥にしまい、ふと窓の外に目をやった。

校庭で、翼くんがこちらを見上げていた。

目が合った瞬間、彼が楽しそうに口の端を上げる。

唇が動いた。──『みいつけた』。

心臓が、壊れそうなほど大きく波打つ。

私はカバンの持ち手を、ぎゅっと両手で握り直した。靴の中で、足の指が自然と丸まる。

怖い。でも、負けたくない。この秘密だけは、絶対に守り抜く。

胸の奥で、静かに、熱く炎が燃え上がった。

この対決、受けて立つ!

昼の影と、夜の影。二つの顔を持つ私。

翼くんとの甘くて危険な頭脳戦が、今、始まる──。