「学校に忍び込んで、物を取るなんて。それって、泥棒と一緒だよね」
翼くんの言葉に、胸がチクリと痛んだ。
「でも……怪盗ムーンは、大切なものを取り戻してるだけかもしれない」
そう言うと、翼くんは少し笑った。
「なるほど。確かに、そうかもしれない」
翼くんは本棚の前で立ち止まり、私のほうを見た。
「俺は興味があるんだ。怪盗ムーンがどんな人なのか。なぜ、そんなことをするのか」
「……さあ」
「きっと、何か理由があるんだろうね」
翼くんの声が静かになった。
「怪盗ムーンも、誰かに大切なものを奪われた経験があったりして」
ドキッとする。まるで、私の過去を見透かしているみたいな──。
「そう、かもしれませんね」
なんとか答える。
「怪盗ムーンってすごいよね。警備員さんの見回りを避けながら、夜の学校を動き回るなんて。相当、運動神経が高くないとできない」
そう言って、翼くんの視線が私の足元に落ちた。
「七瀬さん。右足、どうしたの?」
「え……」
手のひらに汗がにじむ。
「さっきから、少し浮かせてるみたいだけど」
胸のドキドキが耳元でうるさくなる。



