翼くんは、少し不思議そうな顔で私を見つめた。まるで、普通の本棚に一冊だけ場違いな本を見つけたみたいな目だった。
翼くんはすぐに視線を外して、廊下側の席に向かった。
「隣の席の人、色々教えてあげてね」
担任の先生が言う。翼くんの隣の席は、凛ちゃんだった。
「よろしくね、日向くん!」
凛ちゃんが元気よく声をかける。
「よろしく。春野さん、だよね?」
翼くんは爽やかに笑って答えた。二人は、すぐに打ち解けたみたいだった。
◇
翌日の昼休み。廊下を歩いていると、転校生の翼くんとすれ違った。
「あ……」
思わず立ち止まると、翼くんも立ち止まった。
「七瀬さん、だよね?」
翼くんが、微笑む。たったそれだけで、足がすくんだ。
「は、はい……」
「君、図書委員なんだって?」
なんで知ってるの? 翼くんは、転校してきたばかりなのに。
「……うん、そうだけど」
「俺も本が好きだから、また図書室で会えるかな」
「あ、はい……」
それだけ言うと、翼くんは歩いて行った。
その背中を見送りながら、自分でも理由のわからないまま、胸の鼓動が少し速くなった。



