「だって、美月ちゃんいつも一人でしょ? 寂しくないのかなって、ずっと気になってたんだ」
その優しい声に、のどの奥がぎゅっと締まった。
寂しいに決まってる。でも、認めてしまったら、一人で立っていられなくなる。
「凛ちゃんには、わからないよ……っ!」
思わず大きな声が出た。
いつも誰かに囲まれている凛ちゃんには、私の気持ちなんてわからないよ。
だけど、言ってすぐに後悔した。凛ちゃんは、ただ純粋に私を心配してくれただけなのに。
うつむいて本棚を見つめても、背表紙の文字がぼやけてうまく読めなかった。
「そっか……ごめんね、変なこと聞いちゃって」
凛ちゃんは、ちょっぴり悲しそうに笑った。
「でも、困ったことがあったら、いつでも言ってね」
その優しさが、逆に刃のように私の心に刺さった。
「……ありがとう」
消え入りそうな声で答えるのが精一杯だった。
「じゃあね! また明日!」
凛ちゃんは本を返すと、元気に手を振って出て行った。揺れるポニーテールが、廊下の光の中へ消えていく。
優しくされるほど、みじめになる。でも、嬉しくないわけじゃない。
その二つが心の中でぐちゃぐちゃに混ざり合って、私はしばらく本棚の前に立ち尽くした。
どうして、人に優しくされるとこんなに苦しいんだろう。……きっと、あのころからずっとそうなんだ。
私が怪盗ムーンになったのは、ある出来事がきっかけだった。



