野球、やりませんか⁉

「大希くん?」

 わたしの声に反応してこちらを振り向いた有沢くんの手から大希くんがキャップを取り戻すと、素早く被り直す。


 一瞬しか見えなかったけど、間違いない。有沢くんの双子の弟の大希くんだ。


 ただ……前に見たときとは違って、丸坊主だったけど。


「じ、自分で考えろって言われて、とりあえずこれしか思いつかなかったんだよっ」

 大希くんが、耳まで真っ赤になっている。


「大丈夫、似合ってるよ」

「うるせっ。……おまえにだけは見られたくなかったんだよ、クソッ」

 ぎゅっとキャップのつばを引っ張って顔を隠そうとする大希くん。


「ほんと、単純バカでしょ、こいつ。あの日、帰りが遅いなと思ったら、これで帰ってきたんだから」

 そう言って、有沢くんが苦笑いする。


「え、なに。ひょっとして、ウワサの有沢弟?」

 八柳くんの大きな声がグラウンドに響き渡ると、部員の間に緊張が走る。


「は? なにしに来たわけ?」

「マジ勘弁してくれよ」


 うぅっ。一度はみんな納得したとはいえ、本人を目の前にしたらやっぱりそうなっちゃうよね……。


「ケジメってヤツ? なかなかかっけーな、おまえ!」

 そんな空気を一切読まない八柳くんが大希くんに近づいていくと、肩をばしばし叩く。


「なんだ、このうるさいヤツ」

 大希くんが、胡散臭いものでも見るような目で八柳くんを見る。


「有沢、おまえも坊主にすりゃいいのに。似合うってのはわかったんだからよ」

「ロン毛のおまえにだけは言われたくないんだけど」

 二人の間で火花が散る。


 うわわっ、またこの二人……。