野球、やりませんか⁉

「そーそー。一応これでも全国制覇目指してるんで」

「監督もいねえのに、なに言って――」

「九人いれば、野球はできるんだよ。ね、マネージャー?」


 わたしが最初に有沢くんに言った言葉だ。

 覚えててくれたんだ。


 うれしくなって、こくこくと何度も首を縦に振る。


「で、棚橋はセカンドやってくれるんだよね?」

「へ⁉ わ、わたし⁇」

 ビックリして自分を指さしつつ、みんなの顔を見回す。


 えーっと、みなさん、なんだか呆れてらっしゃる……?


「逆にこの状況で他に誰がいる?」

「ったく、セカンドできるんなら最初からそう言えって、羽瑠ちゃん」

「よろしくね、棚橋さん」

「いや、でも、あの……」

「あのさあ、中山と勝負までしといて、今さら『できない』はないよね?」

 有沢くんが、ぐいっと詰め寄ってくる。


 じっと見つめられ、目をそらすこともできない。


「……やる。やりたい。わたしにセカンドをやらせてください!」

 逃げたくなるのを必死に堪えて言い返すと、有沢くんがニッと笑う。


「よし、そんじゃ決まりだな」

「で、中山はどうする?」

「ははっ。なんだよ、これ。この状況で、オレ、もういらなくね? だって、おまえらみんな、棚橋がセカンドやればいいって思ってんだろ? だったら――」

「だーかーら。全国制覇するにはピッチャー一人じゃ足んないんだって」

「全国制覇って……は? そんなとこにオレ、やっぱいらなくね? ふざけてんの?」

 中山くんが、ぎこちない笑みを浮かべ、一歩後ずさりする。