野球、やりませんか⁉

 軽くバットを振ってから有沢くんがバッターボックスに立つと、猪尾先生が渡瀬くんに向かってなにかを言う。

 戸惑った表情を浮かべていた渡瀬くんが先生に向かってひとつうなずくと、わたしにサインを送ってきた。


 ……え? いやいや、ムリムリムリムリ!


 サインを出す渡瀬くんに向かって、ぶんぶんと首を横に振る……わけにはいかないから、目で必死に合図を送る。


 盗塁って……わたし、そんなに足速くないよ⁉


 しかも、強肩のキャッチャーに前半散々盗塁を阻止されて、後半はほとんど盗塁のサインは出なくなっていた。


 ……だから、相手も盗塁の警戒はしていない?


 いやでも、ここでわたしが盗塁失敗なんてしたら全然笑えないから!


 でも、わたしが二塁に進むことができれば、大チャンスには違いないし……。


 ……あーもうっ。本当にどうなっても知らないからね⁉


 ちらりと形だけわたしの方を見ると、ピッチャーがボールを構え、大きく右足をあげる。


 目の前のバッター集中。やっぱり全然警戒されてない!


 タイミングよくスタートを切ると、二塁を目指して必死に走る!


 ボールを捕ったキャッチャーが、流れるようなモーションで二塁に向かってボールを投げた。


「セーフ!」


 塁審の判定に、またまたワッ! と盛りあがる星黎学園ベンチ。


 ピッチャーが小さく舌打ちするのが聞こえる。