野球、やりませんか⁉

 2アウト、ランナーなし。絶体絶命の大ピンチだ。


 すーはーと大きく深呼吸してから、バットを握る。


 落ち着け、わたし。

 まずは、とにかく塁に出る。

 そしたら、有沢くんたちがきっとわたしをホームに返してくれる。


「よーし、よく見た、ナイセン!」


 2ボール2ストライクから、きわどいコースを見送って、3ボール。フルカウント。


 相手チームのキャッチャーがタイムを取って、ピッチャーに声をかけにいく。

 こっちも必死だけど、あっちも必死だ。


「プレイ!」


 ピッチャーが右足を高くあげると、これで最後だと言わんばかりの速球をキャッチャーミットめがけて投げ込んでくる!


 ボッ。


 なんとかバットに当てて、ファウルで逃げる。


 あっっっっぶなー!


 ドッドッドッドッ……。

 心臓の鼓動の速さが今にも限界を超えてしまいそう。


 すーはーすーはーと必死に深呼吸して、なんとか鎮めようとする。


「いいぞー、棚橋!」


 これでいったい何球目だろう。


 バンッ!


 心地よい音を立てて、ボールがキャッチャーミットに収まった。


 一瞬の間のあと、「ボール、フォア!」という球審の声が響き、ピッチャーが天を仰ぐ。


「ナイセン、棚橋!」

「有沢、頼んだぞ!」

 落胆の色が隠せない相手チームとは対照的に、わたしたちのベンチは、ワッ! と盛りあがる。


「ユウ! 絶対打てよーっ‼」

 大希くんの大きな声も聞こえてくる。


 そんな大希くんの方を見て、有沢くんが口元に笑みを浮かべる。