野球、やりませんか⁉

 7回裏1アウト。8番バッターの代打に中山くんがコールされる。


「中山、ボール球、振るんじゃねーぞ」

「ちゃんと見極めろよ!」

「お、おう……」


 いつもは強気な中山くんの顔が、こわばって見える。

 なんだか体までひと回り小さくなったみたい。


 わかるよ。そう声をかけたくなるのも。

 けどさ、これ以上緊張させたって、なんにもいいことないよ。


「中山くん、積極的に打ってこー!」

「そうだ、おまえが試合を決めろー!」

 わたしの声出しに、有沢くんも続けて言う。


「っしゃー‼」

 中山くんは気合の声をひとつあげると、バッターボックスに立った。


 うん、そうだよ。中山くんの魅力は、思いきりのいい豪快なバッティング。

 当たれば大きいと気づけば、相手だって簡単にストライクを取りには来ないはず!


 だけど――。


「あー……」

「クソッ」

 中山くんのバットが空を切り、空振り三振、2アウト。


 悔しさに顔を歪ませ、ベンチへと戻ってくる。


「ドンマイ!」

「よく粘った!」

「ああ、いい粘りだったぞ!」

 みんなにバシバシと背中を叩かれ、うつむきかけた顔をあげる中山くん。


「棚橋! オレからレギュラー奪ったんだからな! 絶対塁に出ろよ!」

 バッターボックスに向かうわたしの背中に、中山くんの激励の言葉が飛んでくる。


 途中で振り向いて大きくうなずくと、ふたたびバッターボックスに向かって歩いていく。