野球、やりませんか⁉

「有沢くん、ナイスピッチ!」

 駆け足で有沢くんのところまで行くと、グローブ同士でハイタッチ。


 そのままベンチへ戻ると、渡瀬くんが有沢くんの前に立った。


 その渡瀬くんの表情が……なんだかヤバそうな雰囲気。


「最後の球、なぜ首を振った」

「いや、あそこはストレートでしょ」

「さすがに三球連続同じ球は危険だ。1回から点を取られたらどうする」

「だって、二球とも全然タイミング合ってなかったし。イケるかなーと思って」

「結果的にはよかったが――」

「相手は三年生。回は1回。俺まだそんなに球種があるわけじゃないし、あんまり手の内をさらしたくなかったの」

 渡瀬くんが、ぐっと言葉を飲みこむ。


「もっとピンチになったら、渡瀬のリードをちゃんと信じるから」

「……わかった。またなにかあれば、遠慮なく首を振ってくれ。有沢には……完璧にやられた過去もあるからな。僕も、有沢を信じる」

「おっけー、相棒」

 有沢くんが片手をあげると、渡瀬くんがその手にハイタッチする。


 よ、よかったぁ。とりあえず、ケンカにはならずにすんだみたい。


 こっそりホッと胸をなでおろしていたら、土谷くんと目が合い、目だけでお互い『よかったね』と言いあった。