前世の婚約者は王太子殿下でした

「怪しい瓶だな。犯人はお前で確定か?」
「違います。私は手がかりを調べようとしていたんです!」

 マリーザが去っていく中、役人の男性がギロリとレーナを睨みつける。

「五日前、毒でお倒れになる夢を見たとルシアン様ご本人にお伝えしました。私が犯人ならそんなことはしません!」

 レーナは毅然とした態度で必死で訴えかけた。
 あのとき、誰にも話すなと言われていたが、宴が終わった今なら問題ないと思ったのだ。

「は? 誰に伝えたと?」
「ルシアン様です。えっと……とても位の高い方で……いらっしゃいますよね?」

 役人の男は眉根を寄せてレーナを見据え、さらに距離を詰めて真正面に立った。

「ルシアンは、私だが?」

 レーナは自分の耳を疑った。しかし、目の前の男性がこんな状況で冗談を言うとは思えない。
 
(この人がルシアン様? だったら、私が夢の話をしたあの人は、いったい誰なの?)

 五日前に高貴な男性と会ったこと自体が夢だったのだろうか。
 一瞬そんなふうに考えたものの、あれは間違いなく現実だったと、自分の記憶を信じることにした。