前世の婚約者は王太子殿下でした

◇◇◇

 宿舎に戻ったレーナは、マリーザが寝泊まりしている部屋の扉をノックした。
 彼女はまだ休憩に入っておらず、調理場にいる姿を確認していたため、この部屋には誰もいないとわかっていた。当然、ノックをしても返答はない。
 レーナはドアノブに手をかけ、辺りをキョロキョロと見回したあと、そっと部屋の中に足を踏み入れた。

(マリーザ、勝手に入ってごめん!)

 部屋の中は掃除も行き届き、綺麗に整理整頓されていた。
 レーナがここへ来たのは、ほかに手がかりになるようなものがないか調べるためだ。
 夢に出てきたものとなにか合致するものがあれば、点と点が線で結ばれるかもしれない。
 引き出しが三段ある木製のチェストに目が留まり、そっと一番上を開けてみた。

(こんな屋探しみたいなことはしたくないんだけどな……)

 特に不審なものは見つからないなと思いながら、ほかの引き出しも調べてみる。
 すると、一番下の引き出しの最奥に、青く光るものがあることに気がついた。

(こ、これって……)

 手に取ってじっくりと眺めてみる。間違いない。それは先ほど調理場の作業台で見た青い小瓶と同じものだった。
 問題はこれの中身だ。もしも毒なら、やはりマリーザが細工を?

「ここでなにをしてるの?」