前世の婚約者は王太子殿下でした

◇◇◇

 大広間では高官たちや騎士団の団長、部隊長たちが一堂に会し、決められた席に着いて談笑している。

 しかし、少し遅れて王族たちが登場した途端、場の雰囲気が緊張感に満ちて静かになった。
 王太子のオスカーが大広間に現れ、そのうしろからは国王の五歳年下の弟にあたるフョードルもゆっくりと歩いてくる。

「オスカー、近ごろはずいぶんと国王陛下の信頼が厚いようだな」

 フョードルがオスカーに声をかけた。
 話の内容はたわいないものだが、口調にはなんとなくトゲがあり、笑顔だが目は笑っていない。

「身に余る光栄です」

 オスカーは無難な返事をし、その場をやりすごした。

 最後に第十二代国王であるブノワ・バルヴィア王がやってくる。
 全員椅子から立ち上がり、右手を左胸に当てて表敬の意を込め会釈をするのがこの国の礼儀だ。
 大広間の正面、少し高い位置にある席が国王と王妃の座で、向かって左脇にオスカー、右脇には側妃やほかの王族が座を占めた。

 皆が再び椅子に腰を下ろしたところで、目の前に据え置かれたワイングラスにワインが注がれていく。
 貴族や騎士たちは同じ等級の赤ワインだが、王族たちには特別に香りのよい上等なものが用意されている。
 給仕係がボトルを手にし、オスカーのグラスにもワインを注いだ。

「待て」