前世の婚約者は王太子殿下でした

◇◇◇

 宴がおこなわれる日がやってきた。
 この日もレーナは調理場を手伝うように指示を受け、宴の準備にいそしんでいた。
 テキパキと手を動かしながらも、気がかりなのは毒の件だ。

(ルシアン様はなんとかすると言っていたけれど、本当に大丈夫かな?)

 レーナはただ心配することしかできなかった。
 そんな中、調理台の隅にちょこんと置かれている青い小瓶が目に留まる。
 それは夢に出てきた小瓶で間違いない。もしもあの中に毒が入っているとしたら、いったい誰が?

 すぐそばにいたのは、マリーザだった。
 夢の中で青い小瓶を持っていた女性の手……長くて細い指が、彼女と酷似している。

 レーナが彼女のほうへ視線を送っていると、急にマリーザが振り返った。
 目が合った彼女はひどく動揺し、視線をさまよわせている。

(まさかマリーザが細工を? でも、今ならまだ止められるかもしれない!)

 レーナは周囲の料理人たちの視線を避けながら、マリーザの背後へ向けてそっと足を踏み出した。