前世の婚約者は王太子殿下でした

 肩に手を添えられ、真剣な瞳でそう言われたレーナは絶対に沈黙を守ると心に誓った。
 しかし、どうして夢の話を怒らずに聞いてくれたのか、どうやって盛られた毒から免れるというのか、レーナの頭の中には疑問が残ったままだ。

(それに、いったい誰が毒を盛るというの? そんな恐ろしいことを……)

 万が一、王族が毒入りの飲み物を飲んで命を落としてしまったら、犯人はこの王宮から追い出されるだけでは済まない。
 王族殺害の罪を問われ、自分の命で償わなくてはいけなくなる。

「大丈夫だ。レーナ、また会おう」

 むずかしい顔をしたままのレーナの腕をやさしくさすり、爽やかな笑みをたたえたオスカーは彼女に背を向けて立ち去っていった。

 ほかにももっと思い出せないかと必死で記憶をたどる。するとそこで、青い小瓶のことが頭に浮かんだ。
 もしかしたらあれに〝毒〟が入っていたもかもしれない。誰かが調理場でコソコソと細工をしていた。
 顔はわからないけれど、女性だった。――あの手は、いったい誰なの?