前世の婚約者は王太子殿下でした

 なにを言うのかと、激高されるのは覚悟の上でレーナは伝えた。
 顔を真っ赤にして怒鳴られるかもしれないと想像したけれど、彼はむずかしい表情をしたまま固まっている。

「俺が毒を盛られると?」

 レーナが見た宴の夢は、国王や高官たちが集まっていて、その中に彼もいた。
 なので普通の騎士ではなく、彼はもっと身分の高い人なのだろうと、レーナはこのとき確信した。
 そんな高貴な人物を相手に無礼な発言をしたら、こっぴどく叱られるのは至極当然だというのもわかっている。
 だが、彼が乾杯をしたあと飲み物を口にし、血を吐いて苦しそうにしながら椅子から床へ崩れ落ちる夢が鮮明によみがえってきたのだ。それを黙っているわけにはいかない。

「今朝そういう夢を見たんです。戯言(たわごと)だと思われるかもしれませんが……」
「いや、よく教えてくれた。ありがとう。君は命の恩人だ」
「……今の話を信じてくださるんですか?」

 きっと、わけのわからない夢の話などいくらでも作れると鼻で笑われるだろう。
 そういう反応を予想していたレーナは、あっさりと信用してもらえたので逆に驚いてしまった。

「私の夢、本当によく当たるんですよ」
「ああ。だけど今の話は宴が終わるまで誰にも言っちゃダメだ。俺が自分でなんとかするから」
「……わかりました」