体育委員になってから、一週間が過ぎた。
思っていたよりも、体育委員会は忙しかった。
放課後は体育倉庫の整理、
体育祭の準備、
用具のチェック。
「これ、外の倉庫に運んどいて」
橘先輩が段ボールを指さす。
「え、重そうなんですけど」
「大丈夫、持てる」
「絶対重いですよ」
私がそう言うと、先輩は笑った。
「じゃあ一緒に持つ?」
「……それなら」
二人で段ボールを持つ。
体育館の外に出ると、夕方の空が広がっていた。
オレンジ色の光が校庭に落ちている。
「藤沢、部活やってないの?」
先輩が聞く。
「やってないです」
「意外」
「なんでですか」
「体育委員だから」
「関係あります?」
「なんとなく」
そんな、どうでもいい会話。
でも――
気づけば、こういう時間が増えていた。
体育館裏の倉庫に段ボールを置く。
「ありがと」
先輩が言う。
「いえ」
「藤沢さ」
少しだけ真面目な声。
「体育委員、嫌だった?」
図星だった。
「……ちょっと」
正直に言うと、先輩は小さく笑った。
「最初みんなそう言う」
「でも」
私は少し考えてから言った。
「今は、そんなに嫌じゃないです」
「なんで?」
「……」
言葉に詰まる。
理由は分かっている。
でも言えない。
「先輩がいるから」
なんて。
そんなこと言えるわけない。
「慣れただけです」
そうごまかすと、先輩は頷いた。
「まあ、それならよかった」
夕方の風が吹く。
そのときだった。
「橘ー!」
遠くから声がする。
振り向くと、男子が手を振っていた。
「サッカー部、練習始めるぞー!」
「今行く」
先輩が答える。
そして私を見る。
「今日はもういいよ」
「え?」
「仕事終わり」
「ほんとですか?」
「うん」
少し間があって、先輩は言った。
「また明日」
たったそれだけの言葉なのに。
胸が、少しだけ嬉しくなる。
「はい」
私は小さく頷いた。
先輩は校庭の方へ走っていく。
その背中を、なぜかずっと見てしまった。
(なんでだろ)
まだ、このときは思っていなかった。
これはただの先輩じゃなくて。
私の心が、少しずつ――
恋に変わり始めていることを。
思っていたよりも、体育委員会は忙しかった。
放課後は体育倉庫の整理、
体育祭の準備、
用具のチェック。
「これ、外の倉庫に運んどいて」
橘先輩が段ボールを指さす。
「え、重そうなんですけど」
「大丈夫、持てる」
「絶対重いですよ」
私がそう言うと、先輩は笑った。
「じゃあ一緒に持つ?」
「……それなら」
二人で段ボールを持つ。
体育館の外に出ると、夕方の空が広がっていた。
オレンジ色の光が校庭に落ちている。
「藤沢、部活やってないの?」
先輩が聞く。
「やってないです」
「意外」
「なんでですか」
「体育委員だから」
「関係あります?」
「なんとなく」
そんな、どうでもいい会話。
でも――
気づけば、こういう時間が増えていた。
体育館裏の倉庫に段ボールを置く。
「ありがと」
先輩が言う。
「いえ」
「藤沢さ」
少しだけ真面目な声。
「体育委員、嫌だった?」
図星だった。
「……ちょっと」
正直に言うと、先輩は小さく笑った。
「最初みんなそう言う」
「でも」
私は少し考えてから言った。
「今は、そんなに嫌じゃないです」
「なんで?」
「……」
言葉に詰まる。
理由は分かっている。
でも言えない。
「先輩がいるから」
なんて。
そんなこと言えるわけない。
「慣れただけです」
そうごまかすと、先輩は頷いた。
「まあ、それならよかった」
夕方の風が吹く。
そのときだった。
「橘ー!」
遠くから声がする。
振り向くと、男子が手を振っていた。
「サッカー部、練習始めるぞー!」
「今行く」
先輩が答える。
そして私を見る。
「今日はもういいよ」
「え?」
「仕事終わり」
「ほんとですか?」
「うん」
少し間があって、先輩は言った。
「また明日」
たったそれだけの言葉なのに。
胸が、少しだけ嬉しくなる。
「はい」
私は小さく頷いた。
先輩は校庭の方へ走っていく。
その背中を、なぜかずっと見てしまった。
(なんでだろ)
まだ、このときは思っていなかった。
これはただの先輩じゃなくて。
私の心が、少しずつ――
恋に変わり始めていることを。


