約束を超えた先で、君を待つ。

今すぐ走り出したい感情におそわれ、病院の中だということも忘れてひたすらに階段を一段飛ばしで走って降りる。

月音にバレたら怒られそうだけど、今だけは許してほしい。

病院を出ると、外はすっかり暗くなっていた。ぶわっとふく風が、俺の前髪をあげてうっすらとかいた汗を冷ましていく。

後ろを振り向くけれど、月音の病室の窓は正面には向いていないからここからは見えない。

……見えなくてよかった。見えてたら、こんなダサいところまで見られてたかもしれない。

「……帰るか……」

高揚感。安心。興奮。戸惑い。そしてなによりも、嬉しいと幸せ。

たくさんの感情がごちゃ混ぜになって、何が何だか自分でもよくわからなくて。

「……あ、付き合ってって言うの忘れた……」

本当、何やってんだ俺は。

とりあえず逃げ出したくなって、家に帰ることにした。

どうしてだろう。歩いていると、いつもと同じ帰り道のはずなのに今日は違って見える。

月音に初めて好きだと伝えたからだろうか。

月音に初めて好きだと言ってもらえたからだろうか。

世界が、昨日とはまるで違うものに見えた。

まだ気持ちが通じたことが信じられなくて、足がふわふわしている気がして、落ち着かない。

月音には信じろって言ったくせに。夢じゃないって言ったくせに。

……本当に夢じゃないよな?

そう思ってしまう自分がいて、自分にドン引きする。

人のこと言えない……いや、だって信じられるかよ。あの月音だぞ?

最初のころ、話しかけても迷惑そうにしてたあの月音だぞ?

あの月音が、俺のことを好きだって。それも、俺に抱きつきながら。顔を真っ赤にして。上目遣いで。

さっきの光景を思い出してしまって、顔に熱が集まる。

……やば、思い出したらもう会いたくなってきた。

もう一度後ろを振り向くけれど、もう病院は見えない。