約束を超えた先で、君を待つ。

――気が付いたら、身体が勝手に動いていた。

だって、自分の腕の中にいる月音が、あまりにも可愛くて。

あまりにも愛おしくてたまらなくなったから。

俺を見上げる上目遣いも、それに滲む綺麗な涙も。全てが綺麗で、愛おしくて、可愛くて。

気が付いたら、その唇にキスをしていた。……人生で、初めてだった。

一瞬だった。時間にしたら、多分一秒もなかった。だけど、俺にとってはそれは何時間にも感じられるほどの大きなことで。

目を大きく見開いて顔を真っ赤にした月音を見た時に、自分でも驚くくらいパニックになってしまって慌てて病室を出てしまった。

「俺、なにやってんの……!」

月音に好きだと言われて、俺も好きだと伝えて。

その小さな身体が"うれしい"と。"幸せだ"と。そう言って震えているのを見たら。思わず……。

あああああ! 俺はなんてことを……!

月音は病人で、入院していて、その……余命というものまで宣告されていて。

山本さんにもおばさんにも聞いた。些細な風邪が、命取りになってしまうこともあるって。

だから、キスなんて絶対にしたらダメだったのに。俺は、なんであんなことを……。

自分の欲に負けて、月音を危険に晒してしまったんじゃないかと思ったら急に怖くなって、月音にメッセージを送る。

"ごめん、俺のせいで風邪とかひいたら……"

すぐに既読がついて、

"大丈夫。だと思う。わたし、熱は出やすいけど風邪とかあんまりひかないから"

そう返ってきて少し安心する。
 
……いや、安心しちゃダメだろ!

だけど、月音が可愛すぎてキスしちゃいましたなんて、山本さんにもおばさんにも言えねぇよ……。