約束を超えた先で、君を待つ。

陽太くんは隙間一つ許さないようにぎゅっと抱きしめてくれて、頭を何度も撫でてくれて。

「やば……幸せすぎる」

そう呟く声が、あまりに甘くて。

「月音」

「……?」

呼ばれて顔を上げると、頬を手で押さえられて。

――ちゅ、という小さな音。

一瞬だけ触れた、唇の柔らかさ。

それが何かわからないほど、無知ではない。

みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていくわたしを見て、陽太くんは我にかえったのか

「っ、マジで時間やばいから帰る!」

とだけ言って、今度こそ扉に向かって行く。

待って、と。そう言いたいのに、衝撃が強すぎて声が出ない。

だけど気持ちが通じたのか、扉を開ける前に陽太くんは振り向いてくれて。

「……また明日来る、から」

「う、ん」

「明日になったら覚えてないとか、やめろよ!」

叫ぶようにそれだけ言って、今度こそ病室を出ていく後ろ姿を見送った。

扉が閉まり、陽太くんが帰っていく足音を聞きながらぎゅっと自分自身を抱きしめる。

いつもなら体力の限界でベッドに倒れてしまうけれど、今日はそんなことすらできなかった。

……あれは、キス? わたし、キスされたの?

まだ熱を持っている気がする唇に、そっと指で触れる。

柔らかくて、少しざらっとしていて。それでいて、ふわりと陽太くんの香りがして。

それを思い出すだけで、顔が爆発したように熱を持つ。

キス、しちゃった……。陽太くんと、キスしちゃった……!

じっとしていられなくて、思わず足をジタバタさせてしまう。走れないくせに、走り出したいくらいに気持ちがたかぶっている。どうしよう、わたし、どうしようっ……!

嬉しくて、幸せで、夢みたいな言葉をもらった。それだけで嬉しかったのに。好きだと言ってくれて、キスまでしてもらって。

本当にわたし、こんなに幸せな誕生日をもらってよかったのだろうか。何かバチが当たってしまうんじゃないか。

そう思うくらい、特別で、大切で、宝物みたいな誕生日をもらった。