約束を超えた先で、君を待つ。

「……目が覚める前ね、夢を見たの」

「夢?」

「うん。陽太くんとわたしが、制服を着て一緒に同じ中学に登校する夢」

にやっと笑ってみせると、陽太くんは驚いたように目を見開いた。

「そこでのわたしは、病気も治って元気いっぱいで。走れるくらい回復してた。あんなに身体が軽いの、本当に久しぶりだった。だから嬉しくて。陽太くんと一緒に学校に行くのも楽しそうで、すごくわくわくした」

「うん」

「このまま目覚めたくないなって、本気で思ったくらいだった」

「……うん」

傷付いたように微笑む陽太くんに、わたしの胸もギュッとなる。

「……だけどね? 陽太くんが、陽太くんじゃなかったの」

「それは、どういう……?」

意味がわからないと呟く陽太くんに笑いながら

「絶対陽太くんが言わないようなこととか、絶対陽太くんがしないようなことばっかりだったの」

そう呟けば、ますますわけがわからないと首を傾げる。

「陽太くんがね、わたしを置いて行こうとしたの」

「……え」

「俺遅刻したくないから先行くわって。早くしろよって。面倒くさそうな顔で」

「それは」

「本物の陽太くんなら、そんなの絶対あり得ないと思ったの」

「……うん。俺もそれはあり得ないと思う。月音を置いて先行くとか、ちょっと何言ってるかわかんねーや」

はっきりとそう言ってくれた陽太くんは、やっぱり陽太くんで。

これこそが、陽太くんだと思うから。

「だよね。……でも、そこで本物の陽太くんの声までしてね。"戻ってこい"って言われてる気がして。それで戻れたの」

あの声がなかったら、もしかしたらあの陽太くんが偽物だと気が付かないふりをしたままだったかもしれない。

夢から覚めないで、と。ずっと思ったまま、全てから目を逸らしたままあの世界を生きていたかもしれない。

そう思うと、怖くてたまらなくて。それ以上に、今こうして目が覚めたことが嬉しい。

「だからありがとう。陽太くん」

口角を上げているのに。そんなわたしを見て、陽太くんは逆に眉を下げた。