だけど、目の前を歩く陽太くんではないようで。
「陽太くん、今呼んだ?」
「え? 呼んでないけど。それより早く行かないと」
「う、うん」
じゃあ、どこから?
"月音! 月音!"
まただ。どこから聞こえる?
声は確かに陽太くんのものなのに、前を歩く陽太くんはわたしを置いてどんどん先に進んでいってしまう。
……あ、れ? なんか違う。
「陽太くん、待ってよ」
「んー? 早くしろよー。俺先行くからなー」
違う。違うよ。
「待ってよ!」
「なんだよ、俺遅刻したくないんだよ」
違う。陽太くんはそんなこと言わない。
いつだって、わたしの隣で、わたしがどんなに遅くても歩幅を合わせてくれて。わたしが遅いことなんて全く気にしていないような顔して。ゆっくりでいいよって。無理すんなよって。言葉にしなくても、表情で教えてくれる。
そんな陽太くんが、わたしを置き去りにして先に行くわけがない。
……そうだ。夢だもんね。夢の世界なんだもんね。
わたしがこうやって制服を着ているのも、学校に行こうとしているのも、飛べそうなくらいに身体が軽いのも。
全部、夢だからなんだよね。
わかっていたはずなのに、現実と違うことを喜んでいたはずなのに。
「……陽太くんっ」
陽太くんが陽太くんじゃない。そのことが、何よりもつらくて。苦しくて。
"月音! 起きろよ。起きてくれよ。頼むから"
どこかから聞こえる、本物の陽太くんの声。
「陽太くん……陽太くんっ」
溢れ出した涙が、夢の世界の陽太くんを見えなくさせる。
そして声を探そうと辺りを見回すと、後ろに一つの扉が現れた。
「な、に。これ……」
それは、いつもの病室の扉のように見えて。
"月音"
確かにこの向こうから、声が聞こえる。
もしかして、ここから戻れるのだろうか。本物の陽太くんの元へ、帰れるのだろうか。
そう思ったら、身体が勝手に動いていく。
そして、扉を開けると。
"月音! 頑張れ!"
その声と共に真っ白な光に包まれて、また意識を失った。
「陽太くん、今呼んだ?」
「え? 呼んでないけど。それより早く行かないと」
「う、うん」
じゃあ、どこから?
"月音! 月音!"
まただ。どこから聞こえる?
声は確かに陽太くんのものなのに、前を歩く陽太くんはわたしを置いてどんどん先に進んでいってしまう。
……あ、れ? なんか違う。
「陽太くん、待ってよ」
「んー? 早くしろよー。俺先行くからなー」
違う。違うよ。
「待ってよ!」
「なんだよ、俺遅刻したくないんだよ」
違う。陽太くんはそんなこと言わない。
いつだって、わたしの隣で、わたしがどんなに遅くても歩幅を合わせてくれて。わたしが遅いことなんて全く気にしていないような顔して。ゆっくりでいいよって。無理すんなよって。言葉にしなくても、表情で教えてくれる。
そんな陽太くんが、わたしを置き去りにして先に行くわけがない。
……そうだ。夢だもんね。夢の世界なんだもんね。
わたしがこうやって制服を着ているのも、学校に行こうとしているのも、飛べそうなくらいに身体が軽いのも。
全部、夢だからなんだよね。
わかっていたはずなのに、現実と違うことを喜んでいたはずなのに。
「……陽太くんっ」
陽太くんが陽太くんじゃない。そのことが、何よりもつらくて。苦しくて。
"月音! 起きろよ。起きてくれよ。頼むから"
どこかから聞こえる、本物の陽太くんの声。
「陽太くん……陽太くんっ」
溢れ出した涙が、夢の世界の陽太くんを見えなくさせる。
そして声を探そうと辺りを見回すと、後ろに一つの扉が現れた。
「な、に。これ……」
それは、いつもの病室の扉のように見えて。
"月音"
確かにこの向こうから、声が聞こえる。
もしかして、ここから戻れるのだろうか。本物の陽太くんの元へ、帰れるのだろうか。
そう思ったら、身体が勝手に動いていく。
そして、扉を開けると。
"月音! 頑張れ!"
その声と共に真っ白な光に包まれて、また意識を失った。



