ゴールデンウィーク明けの水曜日。
朝の通学路を歩いていると、ランドセルを背負った女の子が急に電信柱の前で転んだ。
――だいじょうぶかな?
反射的にそっちを見たとき、電信柱の陰に何か黒い『モノ』が引っ込むのが見えた。
「!」
思わず立ち止まって、目を凝らす。
電信柱の陰でうようよと不気味に蠢いているのは、墨をぶちまけたように真っ黒な、三本の『手』みたいなモノ。
「ねえクロ、あれって……」
「悪霊になりかけた『念』だな」
私の左肩に乗ってる手のひらサイズの黒い狐――クロが淡々と言った。
「いったーい!」
転んだ女の子の膝からは血がにじんでいる。
「だいじょうぶ? 絆創膏、あるよ!」
駆け寄ってきた友達が、小さな手で一生懸命手当てをしている。
「あげは。当然、祓うんだろう?」
冷静に見えて実は相当怒っているらしく、クロは金色の目で私を見つめた。
クロはただの狐じゃない。
私のお父さんが宮司を務めてる立切《たちきり》神社の神使《しんし》なんだ。
霊体のクロが見えるのは私の親族だけ。
普通は女子中学生の肩にミニサイズの黒い狐がいたら、ビックリするよね?
でも、道行く人が誰も無反応なのは、そういう理由なの。
「もちろん。子どもに怪我をさせるヤツは許せないもん」
女の子たちが去るのを見届けてから、私は電信柱に歩み寄った。
お腹の底から霊力を練り上げ、右の拳に集中させる。
「ふんっ!」
怒りを込め、右の拳を電信柱の陰に向かって思いっきり叩きつける!
すると、黒い手のような『念』は「ぎゃっ」と情けない声を上げて消滅した。
「お見事」
「この程度の雑魚なら余裕だよ。さ、行こう」
私はカバンを握り直し、再び歩き出した。
朝の通学路を歩いていると、ランドセルを背負った女の子が急に電信柱の前で転んだ。
――だいじょうぶかな?
反射的にそっちを見たとき、電信柱の陰に何か黒い『モノ』が引っ込むのが見えた。
「!」
思わず立ち止まって、目を凝らす。
電信柱の陰でうようよと不気味に蠢いているのは、墨をぶちまけたように真っ黒な、三本の『手』みたいなモノ。
「ねえクロ、あれって……」
「悪霊になりかけた『念』だな」
私の左肩に乗ってる手のひらサイズの黒い狐――クロが淡々と言った。
「いったーい!」
転んだ女の子の膝からは血がにじんでいる。
「だいじょうぶ? 絆創膏、あるよ!」
駆け寄ってきた友達が、小さな手で一生懸命手当てをしている。
「あげは。当然、祓うんだろう?」
冷静に見えて実は相当怒っているらしく、クロは金色の目で私を見つめた。
クロはただの狐じゃない。
私のお父さんが宮司を務めてる立切《たちきり》神社の神使《しんし》なんだ。
霊体のクロが見えるのは私の親族だけ。
普通は女子中学生の肩にミニサイズの黒い狐がいたら、ビックリするよね?
でも、道行く人が誰も無反応なのは、そういう理由なの。
「もちろん。子どもに怪我をさせるヤツは許せないもん」
女の子たちが去るのを見届けてから、私は電信柱に歩み寄った。
お腹の底から霊力を練り上げ、右の拳に集中させる。
「ふんっ!」
怒りを込め、右の拳を電信柱の陰に向かって思いっきり叩きつける!
すると、黒い手のような『念』は「ぎゃっ」と情けない声を上げて消滅した。
「お見事」
「この程度の雑魚なら余裕だよ。さ、行こう」
私はカバンを握り直し、再び歩き出した。



