――――大国、シルドバーニュは奇跡の国と呼ばれている。
聖女信仰が強固なこの国は広大な地を有し、どの町も人々の活気に溢れていた。
瘴気と無縁の田畑は年中を通し豊かな実りをつけ、井戸から汲み上げる水は浄化せずとも飲むことが出来た。大聖女が不在の国では水は浄化してから飲むものだが、これを可能とするのは現在まで大聖女が祈りを繋ぎシルドバーニュの地を広域浄化し続けてきたからである。
そう、シルドバーニュは大聖女の出現が途絶えることがない。故に奇跡の国なのだ。
大聖女の存在による安定した治世によって栄えたシルドバーニュは、他国と比べても聖女の保護に精力的でその待遇も手厚い。
他国では聖女と知れると強制徴収される国などもあるというが、シルドバーニュでは聖女の任務に従事するものには特別な褒賞が与えられ任期によって額面も異なる。家の事情に応じては一族への援助も惜しまず聖女の赴任地に合わせ家も用意されるという。
この国に生きる聖女は恵まれているのだ。
王命によりこの施策は国家全体に行き届いており、大聖女の力を過信せず一つの綻びも許さぬよう領ごとに神殿を置いて聖女達が国のため日々祈りを捧げている。
それが瘴気の断絶を堅牢とする一因でもあり、奇跡の楽園は幸運と地道な努力によって存在し続けていた。
