冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~

あれはラキュウス辺境伯という同志の元、セシルと共に浄化石を作りに瘴気溜まりへ向かった時のことだ。

ラキュウス辺境伯の後ろ盾を持ってしてもシルドバーニュは聖騎士団を動かすことはなく、セシルはその身をもって浄化石の可能性を証明すると言って瘴石の採掘と浄化を試みた。

当時は情報不足だった。瘴気溜まりに掬う異形の怪物は、知性があり、そして凶暴だった。
だがシリウスはセシルを守る手立てを考えており、成功するかに思え希望は十分あった。

それを覆したのは幻覚だ。

「――セシル!駄目だ。あれは違う、こんな所に子供が居るわけがない!!」
「でも放っておけない」

瘴気溜まりで、怪物に襲われている子供が居たのだ。
周辺には行商人の一団を装った姿。
あり得ない。
瘴気が蔓延する地を、人が、それもこんなタイミングで現れるわけがないのだ。

だというのにセシルは動いた。

「あんたはそこに居ていいからっ、様子を見てくる」
「浄化石を作るんだろ、無視しろ!!待てっ!」

止めてもセシルは聞かない。
豪胆で、気紛れで、夢があるくせに無鉄砲なことをする理解しきれない相手。

よく考えてみれば大聖女が剣を握るのは普通じゃない。
自由を守るために生きてきたセシルは、生きることに執着して、他者にもそれを求めていたのかもしれない。

「現実じゃなくて良かった……世話かけてごめん」

結果、シリウスは間に合わず、セシルは致命傷を受けた。
失敗に終わった浄化石作り。
息絶え絶えのセシルを肩に背負い撤退しながらシリウスは問う。

「夢はどうするんだ……ラキュウス辺境伯の後ろ盾まで得て、ここまで来た。大聖女が居なければ研究は続けられない」
「そうだね……」

そんな二人の前に一人の魔法使いが現れて嘲笑った。

幻覚の使い手だと自ら明かし、純粋な悪意に染まった悪魔のような男の顔をシリウスは深く記憶に刻み込んだ。