「おまえも士官学校の出(で)だったよな?よしっ、俺と将棋で勝負しろ!」
「…俺は将棋は得意ではない」
「だったらそれこそ俺とやれ!エリートの伸びた鼻をへし折ってやるからよお」
来い来いと俺を誘いながらも、すでに風間は将棋板を持って自らこちらに来た。
ここは南九州にある知覧の特攻基地。
陸軍パイロットを夢見た20歳前後の男たちが地方から集まっている。
そう、ここにいる誰もが最初は自由に空を飛ぶパイロットを目指していたのだ。
「…王手」
「うっそだろ!?おいっ、おまえ将棋は苦手だと言っていただろ…!!」
「風間が弱すぎるんだ。そんな単調的な戦法だと、誰とやろうが同じだぞ」
「んなっ!うるせえっ」
ははは、と。
いつの間にか俺たちの勝負を取り囲んでいた仲間たちの声。
いつ出撃命令が下されるか分からないというのに、今という時間だけは誰もが年相応な笑顔を浮かべていた。
任務が下れば、翌日には空へと飛び立つ。



