1945年、君を迎えに行く。

鳥海side─1945年─




「…ふっ。王手だな」


「おいっ、そこで桂馬はズルいぞ!駒に頼るんじゃなく、もっと頭を使ったらどうだ?」


「これも俺の戦法だ。風間(かざま)こそ、飛車と角にばかり頼るのはどうかと思うけどな」


「くっそ……」



パチン、パチンと、将棋板に駒が置かれる心地よい音が止まった。


昼の飛行訓練が終わると、兵士たちは残りの時間を自由に過ごす。

兵舎内で本を読む者もいれば武器の手入れをする者、仲間と話したり将棋をしたり、外で身体を鍛えたりと、様々だ。


身体が生まれつき弱い俺は、決まって端に座って勉学をするふりをしながら仲間たちの声を聞いていた。



「飛行学校の出の風間には、慶應出身で士官学校を卒業した俺は倒せないな」


「…いつかぐうの音も言わせねえ程にしてやるぜ」


「はははっ!そりゃ楽しみだ」



………来ることのない約束を、また今日もしている。



「あっ、そういや鳥海!」



おなじ部隊のなかでも一際賑やかな風間 当(かざま あたる)は、静かに座っていた俺に目を向けた。

薄暗いなかでも風間が笑った顔だけは見える。