「平行世界、つまりパラレルワールドの鳥海 隼人になる。どちらも本物だが、ここにいる鳥海はオリジナルではない。
なんらかの時空の歪みが生じて、本来この時代に来ようとしていた鳥海ではなく……並行世界のこいつが来てしまったわけさ」
「ま、待ってよ。ってなるとさ…、つまり……本来この時代に来ようとしてた鳥海は……」
「ああ、君が最初に会ってきただろう黒糖飴の彼だよ。そいつが元々…サイコロを持っていたんだろうな」
兵士に、なれたんだ……。
心臓が悪かったとしても航空士官学校を無事に卒業して、本来の鳥海は。
それが1回目、私に黒糖飴を渡してくれた知覧にいた彼─オリジナル─。
けれど2回目、私が会ってきたあの鳥海は、その世界線ではなく。
“兵士になれなかった世界線”の、長野の人里離れた小さな農村に暮らす鳥海。
同じようで鏡のような世界……。
そしてパイロットの夢は叶わず長野に暮らしていた彼が、今、ここにいる。



