「すごいな……この場所は」
物知らずとか世間知らずとか、そういうことじゃなくて。
噛み締めるように放たれた言葉から滲み出る切なさと静かさ、温かさ、儚さ。
一体どこから来るものなんだろうと、心の奥がツキンと音を立てた。
「鳥海。本題はここからなんだけど」
また空気感を戻した鳥海の前、私はひとつのお手紙を差し出す。
シンプルな無地かと思えば端に小さなクローバーがついたレターセットは、私に頼んできた彼女そのものだ。
「これ、杠さんから」
「…………」
「よかったね。ラブレターだよ」
予想の斜め上だったのか、差し出した手紙を受け取ろうとしない鳥海。
とりあえず目の前に置いて、私は残ったシフォンケーキをフォークで切り分ける。
「ちゃんと読んであげな?たぶん、すっごいたくさん書いてるだろうから」
「…俺は杠と話したことなんかない」
「なら、これがきっかけになるわけだね」
あ、そうだ杠さん。
この喫茶店は決してデートじゃないから安心して。
むしろあなたのお手紙を渡すための口実。



