「雰囲気いいね。これならもっと早く来ればよかった」
穏やかそうな60代ほどのマスターがひとり、カウンター内でコーヒーを焙煎していた。
ゆるやかなジャズが流れる店内では、意識していなくとも話し声は小声に変わる。
高校生が来るにはちょっと大人びた場所かもしれないが、マスターは微笑んで案内してくれた。
「オススメは自家製のシフォンケーキだよ」
2人分の水を静かにテーブルに置きながら勧めてくる。
毎朝手作りで仕上げているらしく、このお店の常連客は必ず頼むものだという。
せっかく来たんだからオススメを食べよう。
「じゃあ、それをふたつ…お願いします」
「はいよ。飲み物はサービスで付けておくからね」
「えっ、いいんですか?ありがとうございます」
どうにも若い客は珍しくて嬉しいと。
高校生なんて初めてだと、満足気にカウンターへと戻っていく。



