「僕らは君に嘘をついた」
マッサンが呟くように言ったのは、21時を過ぎた頃。
簡易的なソファーに腰掛けていた彼は少し前までノートパソコンを操作していたが、気づけば窓際で夜景を立ち見ていた。
ベッド脇の丸椅子に地蔵のように座っていた私は、ふと顔を向ける。
「僕と鳥海が初めて出会った日。彼は僕の自宅付近の道端になんか倒れていなかったんだ。こいつは…、歩道橋から飛び降りようとしていた」
「…え?」
「死のうとしていたんだよ」
改めて言われて初めて、言葉の意味が追いついてくる。
こんなことを思ったなんて正直に言えないが、道端に倒れているところを助けたというお決まりのエピソードよりも、たった今説明された内容のほうがしっくりきてしまった。
不本意だけれど、疑いなくすんなりと受け入れることができてしまう。



