1945年、君を迎えに行く。





『わかった。貸し1な』


「…はいはい」



貸しも借りも作りたくない主義だけど、ここは折れるしかない。

友達をひとり置いてあすなろ園に帰ることは、どうしてもできそうになかった。


今夜が山、乗り越えられるかは分からない。


そんなことを言われていつも通り帰る神経など持ち合わせていない。



「俊太郎」


『ん?まだあんの』


「……ありがとね」



なんだよ気持ち悪いと、そんな返しで満足だった。


俊太郎は私より先にあすなろ園にいた、お兄ちゃんでもある。

歳は同じでもお兄ちゃんだ。


幼い頃から特別仲が良かったわけでもないが、俊太郎とのあいだには言葉が無くても通じあえる何かがあった。



『まあ、たまにはいんじゃね。志緒ってなんやかんやいつもワガママとか言わなかったじゃん。…貸し、やっぱ無くていーわ。無償でいい』



本当はこの時点でもう、私のなかで踏ん切りはついていた。