「まあいっか…。あとで廣岡(ひろおか)先輩に言っとこ」
これも不戦勝扱いだ。
廣岡先輩は図書委員をしている先輩で、彼女と出会ったのは去年。
本屋さんでたまたま興味本位に手にした漫画がラスト1冊、それを譲ったのが出会いのきっかけ。
彼女はなんていうか、とてもオタク気質で、メッセージアプリを交換してから興味もない漫画の感想を定期的に送ってくるのだ。
「志緒」
………待ち伏せてたな、こいつ。
「今日は図書室、行かないのか?」
「……行かない。今日はお風呂当番だから」
「お風呂当番?」
下駄箱でローファーに履き替えようとした私は、声をかけてきた人間を見ることもしないで動きを続行させる。
私が毎日毎日図書室で本を漁ってると思ったら大間違いだよ、鳥海。
むしろ本なんか嫌いなほうだ。
気だるげに踵(かかと)をしまいこんだ私に、くつくつと笑い声が向けられた。



