1945年、君を迎えに行く。





「……待て、今のは練習だぞ」


「うん」


「っ、……これも練習だからな、」



何度も何度も吹き込んだところでびくともしない風船を見て、となりでケラケラと小さく笑っている。

その顔を見られたのだから膨らませられない俺の勝ちだ、とも思いながら、俺はもう一吹き力を込めたところで。



「はい、おしまい」


「おい、」


「そろそろ本気で苦しくなっちゃうでしょ」



ひょいっと呆気なくも取られてしまう。



「代わりに私がやってあげるから」


「…………」



俺がたった今まで口付けていた場所に、同じようにして噛んだ志緒。

ぷくーっと黄色が丸みを帯びたところで、ハッと気づいた彼女は風船以上に頬を膨らませていた。



「ッ…!!」



ブーーーッと、なんとも間抜けな音を出しながら、唇から離れた風船は空を駆け回ってチャポンと川に落ちる。