「……待て、今のは練習だぞ」
「うん」
「っ、……これも練習だからな、」
何度も何度も吹き込んだところでびくともしない風船を見て、となりでケラケラと小さく笑っている。
その顔を見られたのだから膨らませられない俺の勝ちだ、とも思いながら、俺はもう一吹き力を込めたところで。
「はい、おしまい」
「おい、」
「そろそろ本気で苦しくなっちゃうでしょ」
ひょいっと呆気なくも取られてしまう。
「代わりに私がやってあげるから」
「…………」
俺がたった今まで口付けていた場所に、同じようにして噛んだ志緒。
ぷくーっと黄色が丸みを帯びたところで、ハッと気づいた彼女は風船以上に頬を膨らませていた。
「ッ…!!」
ブーーーッと、なんとも間抜けな音を出しながら、唇から離れた風船は空を駆け回ってチャポンと川に落ちる。



