1945年、君を迎えに行く。





「静かだろう、夜は」


「…うん」



沖縄では今も民間人をも巻き添えにした地上戦が行われている。

これも、志緒は知らなくていい。


こんなにも静かな夜におまえが隣にいるこの夢みたいな時間を、俺はただ、味わいたいから。



「鳥海、これ知ってる?」


「……ゴム風船か」



と、そっと空気を変えるように志緒が取り出した黄色。

どうにも授業で使った余り物らしく、友人が気に入って毎日のように膨らましているから自分も持ってしまっていたという。



「これ、膨らませられる?」


「…ああ。任せろ」


「ふふっ。無理しなくていいよ?」


「できる。やってみせる」



試すような目を向けてくるもんだから、俺らしくもない意地を張ってしまった。

志緒の手からゴム風船を奪い、さっそく噛む。


ゴム特有の居心地のわるい匂いと感触を気にせず、息を吹き込む……が。