「…レオ」
「な、なんだよシオねーちゃ───」
パンッ!!
初めて、弟を叩いた。
「な、なにすんだよ…っ」
「死ぬってのがどーいうことか分かってんの!?」
「っ…」
「消しゴムなんか言ってられないんだよ…!死ぬってのはもう2度と会えないだけじゃない、なんにも…、なんにも伝えられないんだよ…っ、……謝んなよ、ッ、いーからショータに謝れって言ってんの!!!」
私がここまで声を荒げたこともまた、初めて。
恐怖心だけで私を見ている怯えた目は、まだ状況を完全には理解していない。
見守っていた保育園組は泣き出して、騒ぎを聞いた中学生たちまで部屋から出てきた。
「なんでみんなオレばっか…っ、シオねーちゃんのバカ…!!」
「っ、レオ…!!」
施設を飛び出したレオは靴も履かず、夕方の空へと溶けるように消えていく。
どんなに喧嘩をしたとしても手を出してはいけない。
手を出したほうが負け。
これもまた、あすなろ園のルールだった。



