偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


動画の中の彼女は、顔を映さない。手元だけで話し続ける。それは、ずっと裏方でいた彼女そのものだった。

見てほしいのに、見られるのが怖い。その気持ちが、動画の向こうから滲んでくる気がした。

俺は、台本の最後のページをもう一度だけ開いた。

【本当の自分で、誰かと向き合いたい】

君も、そう思っていたんだな。

──ガチャ。

ノックもなしに、部屋のドアが勢いよく開いた。

「おい、景斗。入るぞー!」

入って来たのは、幼なじみの(こう)だった。

幼稚園の頃からの付き合いで、俺の部屋には勝手に上がり込んでくる。

無造作に伸びた黒髪をかき上げながら、こちらを一瞥して、当たり前のように俺の向かいに腰を下ろす。

どんな状況でも動じない顔をしているくせに、こういうときは妙に察しが良い。

「お前、またそれ読んでんの? 何回目だよ」

洸は、机の上の台本を見た。

「……お前に関係ない」

「あるだろ。その顔で、関係ないは無理がある」

洸はあっさり言った。如月真白の件は話してある。

「確かに、騙されたのは事実だよ。でも、景斗がそんなに引きずってるってことは、それだけが理由じゃないだろ」

俺は唇を噛みしめる。