【景斗side】
夜。自分の部屋で、俺は机の上に置かれた台本を見つめていた。
あの日、遊園地で彼女が落としたもの。
ここ数日、俺はそれを何度も手に取っては、開いて閉じた。
ページの余白には、手書きのメモがびっしりと書き込まれている。
【シンデレラは、なぜ舞踏会に行きたかったのか?】
【魔法が解けたとき、一番勇気がいる】
そして、最後のページ。他のメモより大きな字で、一言だけ書かれていた。
【本当の自分で、誰かと向き合いたい】
しばらくその言葉を見つめたまま、俺は動けなかった。
何度読んでも、このメモの正直さに心を打たれる。
裏方として誰かを支えながら、本当は自分を見てほしいと願っていた彼女。
それは、親の期待に応えながら、自分の夢を隠し持っている俺と重なる。
ふと、スマホを手に取った。
気づいたら、あのメイク動画のアカウントを開いていた。何度も見た動画だ。再生すると、落ち着いた声が流れてくる。
『もともとそこにあったものを、見えやすくするだけです。光と影のバランスで、その人の顔は全然変わって見えるんですよ』
「っ!」
その声が、カフェであの子がメイクについて話していたときの声と、ぴたりと重なった。
俺は画面を止めた。
そうか。ずっと気になっていた声は、あの子だったのか。



