偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


空が橙色に染まり始めた頃、私たちは観覧車に乗った。

ゴンドラの中は静かだった。窓の外には、街の灯りが広がっている。

私たちは、しばらく黙って景色を見ていた。

「如月さん」

景斗さんが、真剣な表情で話し始めた。

「俺……将来は、絵を描く仕事がしたいなって思ってるんです」

景斗さんはスマホを取り出して、画面を見せてくれた。

風景画のスケッチだった。丁寧に描かれた、公園の木々。光と影の使い方が、すごく繊細だった。

「わあ……」

「こうして誰かに絵を見せるのは、初めてなんだ。親には言えなくて、ずっと一人で描くだけだったから」

景斗さんは、困ったように、でもどこか嬉しそうに、口元をゆるめた。

「カフェで如月さんに話した日から、ずっと考えてた。やっぱり、諦めたくないって」

「この絵、すごく素敵です」

「ありがとう」

景斗さんは、窓の外を眺めながらぽつりと言った。

「……君といると、うまく言えないけど、自分を隠さなくていい気がして。そんなふうに思えたの、初めてなんだ」

「景斗さん……」

「俺、如月さんのこと──」