偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「実は、俺……こういう高級なケーキより、コンビニの肉まんのほうが好きなんです」

「え!?」

その瞬間、頭の中で、何かがひっくり返った気がした。

完璧な銀髪の貴公子の口から出た言葉は、あまりにも私と同じ「日常」の匂いがしたから。

思わず顔を上げると、景斗さんはまっすぐ前を向いたまま、唇の端だけをわずかに持ち上げていた。

「……わかります!」

声が出た。思わず、素の声が。

「冬の肉まんって、神じゃないですか? あの湯気と、ほかほか感と、片手でもぐもぐしながら歩けるし……」

「……神?」

景斗さんが、私のほうを向いた。驚いたような目。だけど、すぐに笑みが広がった。やわらかい、本物の笑顔。

「如月さん、そんな言葉使うんですね」

「あ……つい、庶民的な表現を……」

しまった。冷や汗をかきながら、私は目を逸らした。