偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


一週間後の週末。西園寺家のテラスは、秋らしい日差しに満ちていた。

白いテーブルクロスの上に並ぶのは、宝石みたいなケーキとお茶。

カップ一つで、私の一ヶ月分のお小遣いが軽く吹っ飛びそうだ。……いや、もっとするかも。

私は「真白」として、背筋をピンと伸ばして椅子に座る。

ティーカップを三本指で持ち、言葉遣いに気をつける。目線は柔らかく。

正面に座る景斗さんは、今日もどこか遠くを見ているような、上の空の様子だった。

両家の親たちが和やかに話している間、私と景斗さんの間には穏やかな沈黙が流れた。

そのとき、ケーキが運ばれてきた。

小さなお皿に、繊細な飾りのついたショートケーキ。白いクリームに、赤い果実と金色のパウダーが散っている。

きれい……でもこれ、一個で──。

頭の中の電卓が勝手に動き出しそうになって、私は慌てて視線を正面に戻した。

「どうかしましたか?」

景斗さんが、不思議そうにこちらを見ていた。

「いえ、あまりの美しさに見とれてしまって……」

我ながら、苦しい言い訳だ。

「そうですか」

景斗さんの声が、ほんの少しだけ柔らかくなった気がした。

気を取り直して、ケーキを一口。

ふわりとクリームが溶けて、甘さのあとにほのかな酸味が追いかけてくる。

……おいしい。値段を考えていたのが申し訳なくなるくらい!

「……あの」

景斗さんが、ふいに口を開いた。

「如月さん。先日、『甘いものは、あまり』とおっしゃっていませんでしたか?」

「っ!」

心臓が、ドクンと大きく跳ねた。

そうだ、思い出した。顔合わせのあのとき……。

『お茶は、お好きですか?』

『……ええ、まあ』

『それじゃあ、好きなお菓子は?』

『……甘いものは、あまり』

……詰んだ。あのときは真白さんになりきって、つい口走っちゃったけど。

まさか景斗さんが、あんな一言を覚えているなんて……!