偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


【景斗side】

如月真白との顔合わせから、数日後のこと。

自分の部屋で、俺はスマホを手にベッドに横になっていた。

何となく画面をスクロールしていると、おすすめ欄に一つの動画が流れてきた。

サムネイルには、メイク道具が並んでいる。タイトルは『眠そうな目元を、3分で変える方法』。

俺は、何となく再生した。

画面に映っているのは、手元だけだ。白くて細い指が、ブラシを動かしている。

「目の形って、光の当て方で全然違って見えるんです。ここに少し足すだけで──」

落ち着いた声だった。説明が的確で、押しつけがましくない。気づいたら、俺は最後まで見ていた。

アカウント名は『@makeup_magic_H』。フォロワーは5万人以上いる。それなのに、配信者の顔は一度も映らない。

なんでこんなにうまいのに、顔を出さないんだろう。

俺は画面を止めて、天井を見上げた。

そして、ふと気がついた。

あの声……どこかで聞いたことがあるような気がする。

静かで、でもどこか芯のある声。記憶の端を探ってみるけれど、うまく引っかからない。

──いや、気のせいか。

スマホの画面を閉じようとして、指が止まった。

他の動画も見てみるか。

【景斗side 終】