「……夜、メイクの練習してたら遅くなっちゃって」
「またか」
咲季はため息をついたものの、怒っている顔じゃなかった。ただ、心配している顔。
「無理しないでよ、陽葵。一人で全部抱えすぎだよ」
「どれも好きでやってることだから、大丈夫だよ」
演劇部の裏方仕事も、SNSのメイク動画も、勉強も全部、自分で選んでいる。
「……好きでやってるのと、無理してるのは、別の話でしょ」
咲季は静かにそう告げた。私は返す言葉が見つからなかった。
「ありがとう、咲季」
それだけ言って階段を下りると、咲季は何も言わずについてきてくれた。
◇
放課後の演劇部の部室。メイクブラシのケアをしていると、部室のドアが静かに開いた。
「……結城さん、ちょっといいかしら」
如月真白さんだった。
あの、あっけらかんとした笑顔とは違う。今日はどこか、申し訳なさそうな表情をしている。それがかえって怖い。
「何ですか?」



