偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「……夜、メイクの練習してたら遅くなっちゃって」

「またか」

咲季はため息をついたものの、怒っている顔じゃなかった。ただ、心配している顔。

「無理しないでよ、陽葵。一人で全部抱えすぎだよ」

「どれも好きでやってることだから、大丈夫だよ」

演劇部の裏方仕事も、SNSのメイク動画も、勉強も全部、自分で選んでいる。

「……好きでやってるのと、無理してるのは、別の話でしょ」

咲季は静かにそう告げた。私は返す言葉が見つからなかった。

「ありがとう、咲季」

それだけ言って階段を下りると、咲季は何も言わずについてきてくれた。



放課後の演劇部の部室。メイクブラシのケアをしていると、部室のドアが静かに開いた。

「……結城さん、ちょっといいかしら」

如月真白さんだった。

あの、あっけらかんとした笑顔とは違う。今日はどこか、申し訳なさそうな表情をしている。それがかえって怖い。

「何ですか?」