偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


画面を二度見した。数字は変わらない。コメント欄には、たくさんのメッセージが並んでいる。

『これで100均!? すごい!』

『お嬢様メイク、やってみたい!』

『この人、プロ!?』

しばらく画面を眺めて、それからゆっくりとスマホを置いた。

誰かに喜んでもらえた。それが純粋に、嬉しかった。

でも、『顔全体も見せて!』というコメントが、いつもより多い。

見てほしい、でも見られたくない。そのふたつが、ずっと私の中で綱引きをしている。



登校すると、咲季がスマホを手に興奮した様子で話しかけてきた。

「ねえ、昨日バズってたメイク動画見た? すごかったよね!」

内心どきりとした。たぶん、私の動画のことだ。

「……そうだね」と、なるべく普通の顔で相づちを打つ。

すると、咲季が私の右手をじっと見つめた。

「……ねえ、陽葵。その動画の人、陽葵と同じところに小さなペンだこがあるんだよね。それに、ブラシの持ち方もなんだか……」

咲季はスマホの画面と私の手を交互に見て、何かを言いかけるように口を開いた。

「……咲季?」

おそるおそる聞き返すと、彼女は一瞬だけ真剣な目をした。

そのまま私の顔を見て、それから小さく息をついて──すぐに、いつもの明るい笑顔に戻った。

「ううん、なんでもない! やっぱプロは違うなーって思って」

気のせいかな? それとも……。

ざわつく気持ちを落ち着かせようと、私は自分の手を見つめた。

ペンだこの小さな膨らみが、いつもよりはっきり見える気がした。