偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


夕食を終えて自室に戻った私は、スマホでメイク動画を撮影することにした。

「こんにちは。今日は、100均コスメだけで『お嬢様メイク』に挑戦してみます!」

顔全体が映らないように手元だけにピントを合わせて、いつも通り撮り始める。

カメラに向かって喋るとき、いつも少しだけ別の人間になれる気がする。

顔は映さない。声と手元だけの「私」なら、怖くない。

動画の投稿を終えて、そのままベッドに倒れ込んだ。

天井を見つめながら、ぼんやりと今日のことを振り返る。

景斗さんの横顔が、頭の奥に残っていた。

あの遠い目。笑顔のない横顔。あんなにきれいな顔をしているのに、どうしてあんなに寂しそうに見えたんだろう。

そして、あの一瞬。口の端が持ち上がった、あの顔。

あれは、何だったんだろう……って、そんなことを考えても仕方ない。

景斗さんとは、もう会うこともないのだから──そう自分に言い聞かせながら、気づいたら眠っていた。



翌朝。スマホを手に取った瞬間、通知が止めどなく流れてきた。

コメント、いいね、フォロー通知──画面を埋め尽くすほどの数に、目が覚めた。

おそるおそる確認すると、昨日投稿した動画の再生回数が50万回を超えていた。

え……うそ。