「中学生が、お礼に渡す金額じゃないわよ。……陽葵、あなた変なことに巻き込まれてないわよね?」
私は、あわてて首を振る。
「違うの! どうしても大事な用事があるから、プロみたいな技術で変身させてほしいって頼まれて……。今回だけの大切なお願いだから、どうしても受け取ってほしいって言われたんだ」
私は、目元にうっすらクマができているお母さんの顔を見つめた。
「お母さん、最近仕事が忙しくて腰が痛いって言ってたでしょ? これで少し、おいしいものでも食べてゆっくりしてほしくて」
かつて舞台の裏方でメイクをしていたお母さん。今は美容師として働きながら、女手一つで私を育ててくれている。
そんなお母さんに、少しでも楽をさせたかった。
「陽葵……。優しいのね、ありがとう」
お母さんの表情がふっと緩み、私の頭をそっと撫でた。
「でもね、次からはこんな大金をもらう前に、ちゃんと相談してね。お母さん、心配になっちゃうから」
その手の温かさが、じんわりと心にしみた。
……ごめんね、お母さん。本当は、お嬢様の身代わりなんていう『嘘』をついているんだ。
罪悪感で、少しだけ視線を伏せた。



