私の問いかけに、真白さんがぴたりと動きを止めた。
目がわずかに泳いで、それからいつもの涼やかな顔に戻る。
「……多分」
「多分って……」
「そ、それより! はい、これ。お礼よ」
真白さんは話を流すように、封筒を差し出した。中には、まっさらの新札が入っていた。
受け取った封筒を、私はカバンの奥に押し込む。
「多分」──その二文字が、頭の中でずっとちらついていた。
これは終わりじゃない。たぶん、まだ続く。その予感が、胸に広がった。
「ありがとう、真白さん」
「こちらこそ! ありがとう、結城さん!」
真白さんは屈託なく笑っていた。本物の笑顔だった。だからこそ、心は複雑だった。
誰かを騙してしまった。その後ろめたさは、お金では消えてくれない。
カバンの奥にある封筒が、なんだか重く感じられた。
◇
その夜。私はお母さんと、小さなダイニングテーブルで夕食を囲んでいた。
お母さんが作ってくれた肉じゃがの匂いと、テレビの音が響く、いつもの食卓。
真白さんや景斗さんの家のような豪華さはないけれど、私はこの場所が一番落ち着く。
「あのね、お母さん。今日、クラスの友達の……メイクのお手伝いをして、お礼をもらったの」
そう言って、3枚の1万円札が入った封筒をそっと差し出した。
「え! ちょっと、陽葵。これ、どうしたの!?」
お母さんが驚いて箸を止め、封筒の中身を見て眉をひそめる。



