偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


私の問いかけに、真白さんがぴたりと動きを止めた。

目がわずかに泳いで、それからいつもの涼やかな顔に戻る。

「……多分」

「多分って……」

「そ、それより! はい、これ。お礼よ」

真白さんは話を流すように、封筒を差し出した。中には、まっさらの新札が入っていた。

受け取った封筒を、私はカバンの奥に押し込む。

「多分」──その二文字が、頭の中でずっとちらついていた。

これは終わりじゃない。たぶん、まだ続く。その予感が、胸に広がった。

「ありがとう、真白さん」

「こちらこそ! ありがとう、結城さん!」

真白さんは屈託なく笑っていた。本物の笑顔だった。だからこそ、心は複雑だった。

誰かを騙してしまった。その後ろめたさは、お金では消えてくれない。

カバンの奥にある封筒が、なんだか重く感じられた。



その夜。私はお母さんと、小さなダイニングテーブルで夕食を囲んでいた。

お母さんが作ってくれた肉じゃがの匂いと、テレビの音が響く、いつもの食卓。

真白さんや景斗さんの家のような豪華さはないけれど、私はこの場所が一番落ち着く。

「あのね、お母さん。今日、クラスの友達の……メイクのお手伝いをして、お礼をもらったの」

そう言って、3枚の1万円札が入った封筒をそっと差し出した。

「え! ちょっと、陽葵。これ、どうしたの!?」

お母さんが驚いて箸を止め、封筒の中身を見て眉をひそめる。