景斗さんは何かを確かめるように、じっとこちらを見ている。
表情は穏やかだけれど、その目は思ったよりずっと鋭い。一秒が、一時間みたいに長く感じた。
すぐ隣には、真白さんのお母様が座っている。実の娘を一度も疑うことなく、優雅に微笑んでいる彼女。
景斗さんがもう一言何か言ったら、この人も気づいてしまうかもしれない。
落ち着いて。視線は、眉間のあたりへ。穏やかに、芯を持って──特訓のときの言葉が、ぱっと頭の中に蘇った。
手が震えそうになるのを、膝の上でぎゅっと握りしめて堪える。
「ええ、初めまして。ふふ、あまりにたくさんのパーティーに出席しておりますから、どこかですれ違っていたかもしれませんわね、景斗さん」
声が、思ったより落ち着いて出た。真白さんから教わった通りの「お嬢様スマイル」を、顔に貼り付ける。
景斗さんはしばらく私の顔を見ていた。その目が、ゆっくりとこちらから外れた。
そのとき、真白さんのお母様が明るい声で口を開いた。両家の親たちが話し始めたおかげで、場の空気が自然に動いていく。
「ふう……」
ようやく、止めていた息を小さく吐き出した。
しばらく、親たちの話が続いた。背筋を伸ばして、目線を落ち着かせる。言葉遣いに気をつけながら、ティーカップを持つ手が震えないよう、指先にそっと力を込める。
景斗さんは黙ったまま、視線を窓の外へ逃がしていた。
さっきと同じだ。この場にいるのに、別のどこかを見ている。
「……如月さんは」
不意に、景斗さんが口を開いた。



